2023年7月16日(聖霊降臨節第8主日) 説教要約

説教題「赦しを受ける喜び」

聖書:ルカによる福音書 第7章36〜50節

今日の聖書は「罪深い女を赦す」とした物語です。女がどんな罪を犯したか語らず、イエスの前に出てきて女が起こす行動に集中します。女は高価な香油の壺を開けて、泣きながら香油でイエスの足に香油を塗り、自身の髪の毛でぬぐいます。弟子たちは女の行為を咎めますが、イエスはそのままにさせ、彼女の行為を褒めます。そして、「あなたの信仰があなたを救った」と、罪の赦しが宣言されるのであります。

聖書はこの女の罪を問うというよりは、罪に苦しむ人の姿を、一人の女を通して物語ると捉えられます。詩篇交読で交わした言葉(詩38:10-23)は、律法の下に生きる人の苦しみを表します。罪に定められると自分ではどうすることも出来ない事実。神の前に立つこともできず、神の子の恵みに与かることもできない苦しみの中で、唯一イエスに縋り頼るしかない、そう決断した女がした行為。それが高価な香油をイエスの足に塗る行動であった。高価な香油は女の罪の深さと同時に、神の前に生きる者とされたいという強い祈りの表出と理解できます。

イエスは「あなたの信仰があなたを救った」と赦しを宣言します。イエスの福音の目的、一つは「神の前に生きる者とされる」、もう一つは「罪を赦され、解放される」ことでありますが、女はイエスの前に出て、香油を塗る行為が、己を無にして神に仕える行為と受け入れられ、「新しく生きる道」が与えられるのであります。

パウロは言います「律法によって罪の自覚がされた」(ローマ7:7)。ただ、律法に忠実に生きても「罪からの解放」はありませんでした。イエスは、罪からの解放によって、新しい命に生きる道を示し、救いの道を明らかにしたのです。

主任担当教師 井上 勇一