2023年2月26日(受難節第1主日) 説教要約
説教題「貧しさをさらけ出して」
聖書:ルカによる福音書 第4章1〜13節
イエスの実像には、二つの見方があります。一つは神の子イエス、もう一つは人の子イエス、という実像です。前者は凛々しい、人の模範となり、奇跡を起こし、人を癒し、人を諭し、卓越した人物像が描かれます。もう一方は自らを罪の元におき、私たちと同じように悩み、苦しむ人の姿であります。
今日の聖書は、福音宣教を開始する前、荒野で悪魔の誘惑を受けるイエスが描かれる場面です。一つは「飢え、渇き」であります。この誘惑に「人はパンだけで生きる者ではない。神の口から出る一つ一つの言葉で生きる」と、誘惑を断ち切ります。次に「富の欲望」の誘惑を受けます。イエスは「ただ主を拝み、主に仕えること、それが願いである」と、誘惑を断ち切ります。さらに悪魔は、イエスに「主がイエスを支えるかどうか」、神殿の上から飛び降りてみたらと誘惑します。するとイエスは「あなたの神である主を試してはならない」と誘惑を断ち切ります。この後悪魔はイエスを離れ、イエスは福音宣教を開始するのです。
この誘惑の物語は、出エジプトでのイスラエルの民が受ける試練に比べられますが、神の民として生きる、新しい生き方を示しています。私たちは「神の口から出る一つ一つの言葉で生きる」「ただ神を信じ、神に仕える」そして「神を試さず、御心に生きる」という生き方です。
ただ、試練に立たされたイエスは「どう試練を受けたのか」、考えさせられます。40日間の試練の中、イエスは死と向かい合い、その飢えや渇き、苦しみの中で誘惑を受け、この誘惑を克服します。そこには弱さや誘惑に負けそうになるイエスが浮かび上がるのです(ルカ福音書22:39〜46)。しかし、イエスの確信は「神が支えてくれている」という確信であります。故に耐え、克服できるイエスが在るのです。
主任担当教師 井上 勇一