12月25日(降誕節第1主日) 説教要約

説教題「地には平和あれ」

聖書:ルカによる福音書 第2章1〜20節

クリスマスおめでとうございます。「神に栄光があれ、地には平和あれ」と御子の誕生を感謝し、2000年の間、祈り続けてきた私たち人間であります。しかし、どの時代にあっても、戦禍は止まず、今も戦争の中で悲劇が起こり、私たちは苦しみ続けています。救い主の誕生が神を讃える徴、私たちには平和の徴でありましたが、皮肉なことであります。

イエスの誕生物語はルカとマタイの福音書に記されていますが、二つの描き方は違います。マタイによる福音書では人間の欲望を丸出しの光景が描かれています。領主ヘロデは、自らの立場に危険を感じて、救い主の誕生が知らされると、近隣の幼子たちを殺し一掃します。その一方で、ルカによる福音書では、貧しい子としてイエスが誕生しますが、その光景は平和そのものであります。そんな中で、貧しい子として誕生したイエスが、貧しい人に対して福音を語る。この「貧しい」という言葉には、ヘロデのような人間の醜さ、愚かさを含む「貧しさ」であるとすると、ルカの描くキリストの誕生は、このような人間の愚かさ、醜さに自らを浸して御子の誕生があることを知らされるのであります。

イエスの生涯も「貧しさ」に自らを浸すように生きた生涯でありました。「貧しさに浸した誕生」、「貧しさに浸した生涯」、この救い主の存在をどう受け止めるのか、それがクリスマスと言えます。

クリスマスの時も人間の愚かさ、醜さによって、戦争が行われ、犠牲になる弱いお年寄り、子供たちがいます。「早く戦争が終われ」と願いますが、それ以前に己の醜さ、愚かさを知り、神の前に自らの貧しさを浸すことが求められています。救い主の誕生、その喜びは、自らを貧しさに浸すことから生まれてくるのだと思います。

「地には平和あれ」と祈りたいです。

主任担当教師 井上 勇一