10月23日(降誕前節第9主日) 説教要約

説教題「己のいのちのことで思い悩む」

聖書:ルカによる福音書 第12章13〜31節

今日の聖書の言葉は、極端な人間の性格が示されています。貪欲な金持ちが、豊作であったので、倉を作り変えて何年もの間生きていけるだけの蓄えをします。すると、神は「愚かなものよ。今夜お前の命は取り去られる。」と、人間の運命の不条理を語ります。

この人間に向かって、イエスの勧めが示されます。「命のことで、何を食べようか、身体のことで何を着ようかと思い悩むな」と言い、「神に委ね生きよ」と勧め、「あなたがたの父は、これらのものがすべて必要であることをご存じである」と、備える神を語り、そして「神の国を求めなさい」と勧めるのです。

聖書の民イスラエルは、移民する民、牧畜する民、さらには農業をする民でもありました。様々な風土、文化の影響を受けてユダヤに定住しました。しかし捕囚を受け、アッシリア、バビロン、さらにはギリシャ、ローマの影響を受けて民族として生きたのがイスラエルの民でありました。何を食べようか、何を着ようかと影響を受けて歩み続けてきたのであります。イエスの勧めは、この民に向かって繰り返し言われてきたことを改めて伝えるものでありました。「神はすべてを知り、それに応えてくれる」、だから、「神に委ね、求めよ」と。

何故、神は「神に委ね、求めよ」と勧めるのか、考えさせられます。人が神の恵みの外へ出ていってしまうのか、そのために私たちを神の恵みの内側に置き続けるために「求めよ」と勧めるのか。それだけではないような気がします。私たちが委ねなければならないことに「命の問題」があります。己に固執する私、自己中心な自分では、己の死はどう係ってくるのか、考えさせられるのです。

主任担当教師 井上 勇一