7月31日(聖霊降臨節第9主日) 説教要約

説教題「ためらいと畏れ」

聖書:マルコによる福音書 第9章14〜32節

今日の聖書は、「てんかん」発作を癒すイエスの奇跡についての箇所であります。イエスは、ここで「てんかん」を起こす子どもに向かってではなく、周りの者たちに言葉を出します。「何と不信仰な時代なのか」、「『できれば』と言うか、信じる者は何でもできる。」、もう一つ「祈りによらなけれ、この種のものは決して追い出すことが」とあります。ここには、「てんかん」発作を巡り、ただ治癒することを求め、神に一切を求めず、祈りを忘れた人が描き出されています。イエスがこのような人に向かって言った言葉、それが3つの言葉であります。

イエスは一つの場面を描きます。神に一切を委ね、発作が起これば、早く治まることを祈り、神にわが子の回復と平安を願う人の姿であります。ただ、この場面は、汚れた霊を追い出すことに集中し、祈りを忘れ神に委ねることも忘れた人たちであります。

詩篇18篇26節に、「あなたの慈しみに生きる人にあなたは愛しみを示し、無垢な人には無垢に、清い人には清くふるまい、こころの曲がった者には背を向けられる。」と。この「汚れた霊を追い出す」奇跡と反対に描かれる癒しの場面があります。「百卒長の僕を癒す」場面であります。そこではイエスに信頼を寄せる百卒長の信仰があり、僕を治癒させたいと祈る姿があります。そして、「言葉を下さい」とイエスに言うのです。

この二つの物語を見ると、前者は病気の治癒を目的にする人が描かれ、後者は「神に委ねる」ことを祈る人が描かれています。イエスが奇跡を行われる行為そのものを考えさせられます。奇跡は病気からの解放でありますが、命の回復でもあります。ただ、それ以上に神の前に生かされることへの回復でもあるのではないでしょうか。

主任担当教師 井上 勇一